Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

夏宵価千金

 ぼうっと仕事をしていた18時ごろ。どこからか、サクソフォンの音が聞こえてきました。
 今日も相変わらず残暑絶賛暴走中でしたから、窓を閉め切ってエアコンを入れていました。なので、聞こえてくる音はクリアではなく、くぐもった感じ。最初は、どこかのお宅が窓全開、ボリューム最大でジャズサックスのCDでも聴いているのかなあと思っていました。
 ところが、その音はどんどん大きくなって、ご近所中に響いているように聞こえてきます。そこで、どこかのお宅がホームパーティでも開いて、サックスを趣味にしている方が生演奏を聴かせているのかな、と思いました。


 ここまでくると、仕事よりも音のほうが気になります。聴けば聴くほど、深みのある音色。もともとサックスは音がよく響く楽器ですが、暮れなずむ夏の宵に音の波紋が広がっていくような、馥郁たる音色です。気取って言うなら、ブランデーの表面に琥珀色の波紋がなめらかに広がるような、まろやかな円を描く響き。


 もう日も落ちましたし、窓を開けて風を入れるついでに、ベランダに出て辺りを見回しました。音は一帯に響き渡っていますが、ベランダから見るかぎりでは、ホームパーティを開いているようなお宅も、CDを大音量でかけているお宅もありません。
 ふと思いついて、今度は玄関から外に出てみました。すると、緑道にある桜の木の下で、若い男性がサックスを吹いているのが見えました。流行のダブッとした黒いズボンにTシャツという、どこにでもいそうな20代前半。しかし、そのサックスの音には並々ならぬものがあります。音の根本的な質が違うと申しますか。
 バリバリと布を裂くようなサックスの音も好きですが、このお兄さんのサックスの、ベルベットをなでるような音もすばらしい。割れないサックス音もいいなあと、すっかり聞き惚れてしまいました。スタンダードなジャズは1曲もなくて、聴いたことのない曲ばかりでしたが、そのブルージィなサウンドはひどく親和性のあるものでした。
 また、今までご近所では見たことのないお兄さんのナゾっぷりもステキですv


 うだった昼の陽気も鎮まり、徐々に暮れゆく宵闇のなかで聴くサクソフォンの音色。まさに、夏宵一刻価千金。