Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

いつかまたきっと観に行きます。……今 敏監督逝去

 昨日、午前8時ごろ、Twitterに流れた訃報に気づき、唖然としました。慌ててオフィシャルサイトやニュースサイトをチェックしましたが、それらしい記述はなし。でもツイートの出所がアニメプロダクション関係者やマンガ家で、誤報の可能性は少なそうだと暗澹たる気持ちに。
 海外のエンタテインメントニュースサイトでは、9時の時点で「R.I.P.: Satoshi Kon(1963-2010)?(Confirmed)」というタイトルの記事が上がっていました。


R.I.P.: Satoshi Kon(1963-2010)?(Confirmed)」(「Cinematical」)
http://www.cinematical.com/2010/08/24/r-i-p-satoshi-kon-1963-2010


 R.I.P.とは「Requiescat in Pace(安らかに眠れ)」という弔辞。最初はrumors(噂)の段階で「?」付きで書かれたものの、「Confirmed」と付け足されているからには「確認済み」ということ。この時点で、私のなかでその訃報は確定的なものになりました。


 日本のニュースサイトが報じ始めたのが、10時ごろ。海外ニュースのほうが早かったことは、外国での今 敏作品の注目度の高さをうかがわせます。実際、「Cinematical」では「'Paprika' Meets 'Inception' in This Mash-Up Trailer」として、『パプリカ』と現在公開中の映画『インセプション』との類似を取り上げているくらいですから。


「'Paprika' Meets 'Inception' in This Mash-Up Trailer」(「Cinematical」)
http://www.cinematical.com/2010/08/01/paprika-meets-inception-in-this-mash-up-trailer/

 今 敏監督。2007年初夏にキネマ旬報社から刊行される『PLUS MADHOUSE今 敏』の仕事が入ってきました。私の担当は声優の飯塚昭三、脚本家の信本敬子へのインタビュー。早速、『東京ゴッドファーザーズ』『千年女優』『妄想代理人』などを観ました。そのときの印象は、アニメという表現手法を熟知されていて、アニメでなければできない映像、そして物語をつくろうとされている、ということでした。
 その後、飯塚氏、信本氏への取材で、お二方がいかに今 敏監督の才能を認め、その作品を愛して、今後も応援したいと思っておられるか、ひしひし感じました。特に飯塚氏の「監督にはぜひ子どもも大人も観て楽しめる作品をつくってもらいたい。老若男女が観に行けるようなやつ。一本でいいんだ。そうしたら、他の作品ももっと注目されるようになると思うんだよね。あんないい作品が一般的にはあんまり知られていないというのは惜しいよ」という言葉は印象に残りました。
 ですから、監督の新作が『夢みる機械』という「子供も楽しめるアニメーション」(『夢みる機械』公式サイトより)と聞いて、「どんな作品になるのだろう」と楽しみにしていました。
 面識はないものの、クセのある方だとは風の噂で聞いていました。しかし作品への真摯な取り組みと特異な発想とそれを具現化できる才能は、常人の持ち得ないところがあったと思います。


 14時35分。『パプリカ』のエンディング(「白虎野の娘)」)や『妄想代理人』のオープニング(「夢の島思念公園」)に曲を提供された平沢進が、このようなツイートを発表しました。



「私は何度も棺を開けて今監督の顔見た。見る者の心を安らかにさせる偉大な死に顔である。」2:35 PM Aug 25th


 今 敏監督の作品から平沢音楽を知った私にとって、それは心に一石を投じるものだったようで、涙が溢れて止まらなくなりました。


 そしてついに公式サイトで「今敏 永眠のお知らせ」が発表されました。8月24日午前6時20分、膵臓がんにて死去。46歳。
 ひき続いて公式サイトの「NOTEBOOK」に遺言とも言うべき、記事「さようなら」がアップされました。それは5月18日に膵臓がんがすでに末期であり、長くて半年という余命告知を受けてからの思いと身辺整理のようす。まわりの方がたへの挨拶を含む、世界への別れの言葉が綴られていました。


「KON'S TONE」NOTEBOOK「さようなら」
http://konstone.s-kon.net/modules/notebook/archives/565


 涙なくしては読めませんでした。私は自分が不治の病にかかった場合、「余命告知してほしい派」です。しかし告知されてのち、さてこれほどに潔く、理性的に人生の始末がつけられるかというと、自信はまったくありません。でも、自分の気持ちも身の回りのことも納得づくでこの世を離れられたら、それが理想と、そんな思いを新たにしました。


 『耳をすませば』の近藤喜文監督は47歳、『機動戦士Vガンダム』『天空のエスカフローネ』『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』『獣王星』などのキャラデザ・作監で知られた逢坂浩司氏は44歳で逝去されました。今、また46歳のアニメ監督が不帰の客に。アニメ業界の外縁で仕事をしているせいか、それとも年齢が近いせいか、アニメ関係者の早い死は殊更重く感じます。
 昨日は、今 敏監督の訃報を知ってから、自分でもおかしなくらい情緒不安定に陥ってました。ふと泣ける、みたいな……。



「世界中に存する善きものすべてに感謝したい気持ちと共に、筆をおくことにしよう。

じゃ、お先に。

今 敏



 行ってらっしゃい、今 敏監督。向こうの世界でまた、奇妙で陰惨で歪曲していて、でもなぜか観たあとは不思議に静寂な幸福感を味わえる、そんな作品をつくり続けていてください。いつかきっと観に行きますから。



livedoorニュース「『パプリカ』『千年女優』などの作品を手がけたアニメ監督の今敏さん死去(GIGAZINE)」
http://news.livedoor.com/article/detail/4966120/




<追記> 19:36 26th Aug.
 amazonの『PLUS MADHOUSE 1 今 敏』、たしか絶版的な扱いになっていたのに、今日見たら発売になってますね。再版されたのだとしたら、うれしいかぎり。今 敏監督の言葉や関係者諸氏の話、ぜひ読んでいただきたい!

PLUS MADHOUSE(プラス マッドハウス) 1 今敏 (キネ旬ムック)

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