映画『ミッドナイト・イン・パリ』は「ここではない何処か」を探すタイムトラベル
先週、映画『ミッドナイト・イン・パリ』を観てきました。
ハリウッドで売れっ子の映画脚本家ギルは、小説家に転身したくて処女小説をこねくりまわす日々。裕福な両親を持つ婚約者のイネスは、脚本家としての成功を捨ててまで小説に固執するギルが理解できません。
イネスの両親がフランスの企業と提携することになり、ふたりのお供としてパリにやってきたギルとイネス。現代にまで名を残す作家や画家、思想家が集っていた1920年代のパリに憧れるギルは、パリに住んで小説を書きたいと願うのですが、「過去に憧れて、夢ばかり見ている」とイネスにも彼女の両親にも彼女の友人にもバカにされるのでした。
孤独に夜のパリを歩くギルは、0時を知らせる教会の鐘と共に現れたクラシックカーにパーティーに誘われます。向かった先にはスコット・フィッツジェラルド夫妻やコール・ポーター夫妻がいました。パーティーの主催者はジャン・コクトー。アーネスト・ヘミングウェイの姿もあります。
憧れの20年代のパリにいることに気づいたギル。彼はパブロ・ピカソと彼の愛人であるアドリアナに出会い、彼女に一目惚れします。しかして、モディリアニ、ブラック、ピカソ、ダリと名だたる芸術家を惹きつけてやまない彼女の「憂愁の瞳」は、ベル・エポック(19世紀末)のパリへの一途な憧れが生んだものでした。
一方、夜毎出かけるギルに不審を抱いたイネスの両親は、探偵を雇って彼の後を追わせます。
鑑賞後、幸せな気持ちと一抹の寂しさを感じる、チャーミングな映画。
本職で成功しながらも、それを低俗と自ら蔑み、小説を書きながらも、批評されるのが恐くて誰にも読ませない、現実よりも過去に魅力を感じる男。他人に自慢できる成功者と婚約するも、非社交的で気の利いたことが言えない、華のない彼に苛立ちを感じる女。どこにでもいそうな人物と、誰もがもつ「ここではないどこか」への憧れ。それをノスタルジックロマンとして描きながら、根底に皮肉を潜ませるところ、サジ加減がさすがのウディ・アレン監督作品!
時間移動を扱った、立派なSF作品なのですが、奇天烈さのない、むしろ地に足のついたロマン映画と感じてしまうところが不思議な映画。
あと、パリの映像がね。仕事で4カ月ほどパリにいたことがありますが、その間、私の目に映るあの都市はざらついた、暗めの紗がかったような感じだったんです。TVや写真で見るパリとは違っていて、表現するに近いのはゴッホの「夜のカフェテラス」と思っていたのですが、『ミッドナイト・イン・パリ』のパリこそ、そのもの! あの感覚が映像になっているのに驚き、感動し、ウディ・アレンという映像作家の凄みを感じました。この映画のパリが、外国人の目に映るかの都市です。
ヒットしてるんですね。ロマン+ノスタルジー+SFのステキな映画だものね。お薦めです!>「『ミッドナイト・イン・パリ』公開1ヶ月で興収2億円突破! ウディ・アレン監督からメッセージが届く」- ニュースウォーカー http://t.co/xeysbKqg
『ミッドナイト・イン・パリ』サイト:http://midnightinparis.jp/
『ミッドナイト・イン・パリ』予告編:http://www.youtube.com/watch?v=_cgX7pnR-xM
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