Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

なつかしの浅草「神谷バー」

 17、8年ぶりに「神谷バー」に入りました。
 浅草1丁目1番1号にある神谷バーは、1880(明治13)年、酒の一杯売りをする「みかはや銘酒店」から始まった、日本で最初のバーです。1882(明治15)年に名物「デンキ(電氣)ブラン」の製造販売を開始。「デンキ」の名は、明治にはまだ珍しかった電気に由来するもので、「舶来のハイカラ」を意味していました。それが「さすがアルコール45度。飲んだらビリビリ酔いがくる」という意味にもとられ、今日までこの名前が定着しています。
 デンキブランは、ブランデーをベースにジン、ワインキュラソー、薬草などがブレンドされたカクテルです。それぞれの割合は、今もって秘伝。現在のデンキブランはアルコール30度、「電氣ブラン<オールド>」で40度です。
 私には、飲んだことがない「幻のアブサン」を連想させるもので、デンキブランにはなんとなくパリの退廃の香り漂うロマンチックなイメージがあります。


 「文明開化の味」として、知る人ぞ知る「幻のカクテル」として、デンキブランは百年の時を超えて愛されてきました。萩原朔太郎が「一人にて酒をのみ居れる憐れなる となりの男なにを思ふらん」(神谷のバァにて)と歌に詠み、太宰治は『人間失格』のなかで「酔いの早く発するのは、電気ブランの右に出るものはないと保証し……」と「保証」しているそうですよ(家のどこかにあるはずなんですが、『人間失格』。見つからないので未確認)。
 永井荷風川端康成はじめ、石川啄木谷崎潤一郎坂口安吾壇一雄……浅草を文学に描き、また浅草に足跡を残した文人たちも、この神谷バーの止まり木に足を休めたことでしょう。


 そんな歴史ある浅草の名所ですが、最初に行ったときは由緒など知りませんでした。当時つき合いのあった人が浅草界隈にくわしい方で、飲みに連れてきてくれたのがココ。普段着のおっちゃん、おばちゃんで賑わう1階のバーのなか、かきわけるようにして席を確保し、「おすすめ」のデンキブランとチーズ盛合せやあさりのバター焼、魚のミックスフライなどをいただいたのが始まり。
 お互いに仕事が終わる20時頃に浅草で待ち合わせて、神谷バーで閉店間際まで過ごし、次にその人行きつけの狭い居酒屋で3時ごろまで飲み、そのあと吾妻橋のたもとの川端に座って、始発電車の時間まで語り明かしたこともありました。20代のころは、こんな無茶をしても、翌日は仕事できてたんですよね(笑)。


 今回は、下町情趣あふれる賑やかな1階のバーではなく、3階の割烹へ。昔、会議があるとかで上京してきた母を案内し、「値段のわりにおいしいね。落ち着くし」と好評だったのですが、このたびはどうだったでしょうか。私はなつかしのデンキブラン(1杯260円!)をあの独特のグラスで飲めて、満足でしたけどv


 神谷バーで昼食をとり、浅草寺に詣って仲見世をひやかしたあと、吾妻橋から水上バス隅田川ライン」に乗船。浅草から浜離宮恩賜庭園を経由して日の出桟橋まで。屋形船で夜の隅田川を上り下りしたことはありますが、昼の隅田川下りは初体験ですv ガイドさんが隅田川にかかる12の橋と両岸の名所・旧跡を説明してくれました。所要時間は約40分。運賃760円。
 でも、最終的にシオサイトに行きたかったのなら、浅草から新橋まで地下鉄銀座線で一直線。日の出桟橋から浜松町駅経由でシオサイトまで歩かなくてもよかったんですよね。
 この日は必要もないのによく歩くハメになったのでした。待ち合わせの浜松町駅でも、待ち合わせ場所を探して20分もさまよう事態に……。駅には10時50分に着いていたのにな orz。


 思い返すと、ムダ歩きをしなくなったなあと思います。ひとり旅であちらこちら巡っていたときは、あてのないムダ歩きも楽しかったのですけれども。28歳で三連徹、四連徹ができなくなり、35歳で二連徹ができなくなって体力の衰えを感じ、42歳でいちだんと体力の衰えとやる気をはじめとする気力の減退を感じ……。眼鏡が必要になったのもこのころ。今ではつい始点と終点を結ぶ最短の移動方法を考えてしまいます。おばさん化一直線でダメダメだなあ。
 どうやら7年周期でガクンとクるみたいなので、5年後が恐怖ですね。


 おまけで、職業柄、待ち合わせのプロフェッショナル(笑)からウンチクをちょいと。待ち合わせ場所のベストは、「○○線○○駅○口改札前」です。ほぼ90%の確率で会えます。会えないときは「○口」を間違えていることがほとんどなので、駅構内の移動だけですぐ迎えに行けます。説明が必要な場合も簡単!
 車で来る人がいるなどやむを得ないときには、「○○線○○駅○○(A1とか神楽坂方面とか)出口地下(あるいは地上出てすぐ/階段の上あるいは下)」。駅の改札以外の場所を待ち合わせにした場合、10メートル離れるにつれ、30%ずつ会える確率が減ります。
 私の仕事では時間どおりに取材相手やクライアントに会えないことは失敗であり、たとえ相手が待ち合わせ場所がわからなかったとしても、「わからない場所を指定した者の責任」。
 「仕事ではなし。待ち合わせにこだわる職業でもなし」と言われてしまえば、それまでですけどね(苦笑)。ご参考程度に。


神谷バーオフィシャルページ」
http://www.kamiya-bar.com