Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

水面に沈む紅葉をすくい上げる刀刃 アニメ『さらい屋 五葉』

 今期のドラマ・アニメで「絶対に見逃さない!」という勢いで観ているのが、『新参者』と『さらい屋 五葉』。『龍馬伝』と『おみやさん』と『怪物くん』は、ちょうど家にいて、時間が合えば観ています。
 アニメのエアチェックがぐっと減りました。仕事がアニメから離れたためか。今期だけのことなのか(今、自宅で仕事しているので、あんまりテレビをかけないのです)。


 さて、『さらい屋 五葉』。時代小説も時代劇も時代アニメも滅多に読まない観ない私が、珍しくハマっています。
 アニメ制作がマングローブと聞いたときに、『サムライチャンプルー』をつくった会社だから和装の動きはどこよりもバッチリだろうし、『スカルマン THE SKULL MAN』的なダークでドライな画面も期待できるなあ、と。監督の望月智充は、マニアックな作品でもそのエッセンスをうまくすくい上げて、一般の視聴者にも入りやすく再構成するのに長けた方。キャラクターデザイン・作画監督中澤一登も、『サムライチャンプルー』のキャラクターデザイナーで、人物の描き方、動かし方に独特の色気や面白味がある方。
 ついでに、『さらい屋 五葉』の原作者であるオノ・ナツメはその作品に熱心なファンが多いマンガ家で、業界内にもハマっている人が多数。去年、アニメ化された『リストランテ・パラディーゾ』は、アニメ制作スタッフの愛をそこかしこに感じる作品に仕上がっていました。
 だから、今期、これだけは観ないとなあと思っていたんです。


 そして、予感したとおり、やっぱり面白い! 原作マンガの乾いた白黒の世界を、カラーでありながら、決してハデに陥らず、どこか乾いた雰囲気によく再現していると思います。


 時は江戸時代のいつごろか。藩主から暇を出され、本家の叔父に任された仕事も辞した秋津政之助(まさのすけ)は、江戸で浪人として暮らしていた。生来の上がり症から人前で刀を振るうことができず、長身を誇りながらも猫背の彼は、「頼りなさ」「気弱さ」全開。商家の用心棒の職を希望しても、二、三日でクビにされる始末。借金を抱えた実家への送金どころか、その日の暮らしにも事欠く彼は、偶然知り合った弥一(やいち)という青年の「用心棒として雇いたい」という言葉に、渡りに舟と乗ってしまう。
 実は弥一は「五葉(ごよう)」という賊の頭目だった。五葉は、旗本や商家から子息を誘拐して身代金を奪う「さらい屋」で、お上に訴え出ることができない悪行三昧の金満家を狙うため、手配されるどころか、市中でその名が噂になることもなかった。メンバーは弥一のほか、妖艶な美女のおたけ、ひとり娘と居酒屋を営む梅造、無口な飾り職人の松吉。それに、自宅を人質の隠し場所に提供している、「ご隠居」と呼ばれる老人。
 人目さえなければ剣の腕は達人級の政之助を見込んだ弥一は、(「見ていて飽きない」という理由で)彼を五葉に引き入れようとする。実家の借金のため、悩みながらも関わっていく政之助。お人好しの彼の野暮な言動が油断させるのか、五葉の誰彼が隠してきた素性や過去を語り聞かせることもしばしば。また、十年以上前に隣家の旗本屋敷で起こった子息の誘拐事件と、使用人としてその子息の世話をしていた親友の死の謎を調べる与力・八木平左衛門も、弥一に探りを入れるため、政之助を利用する。
 政之助の誠意は五葉の意外な絆の深さを暴き、そして自覚のないまま弥一を立場的にも精神的にも追い詰めていく。


 アニメで特に注目しているのが、政之助が刀の鯉口を切るシーン。重みと色気を感じるのですよ。
 実家にある弟の五月人形には、弓矢と対で飾り太刀が付いていました。革包の鞘や柄の拵えは金具から下緒まで本格的なものでしたが、刀身はもちろんおもちゃ。でも金属製だったので、結構な重さがあったのです。飾るたびに汚れなどの異状がないか抜いて調べていたのですが、その鯉口を切るときに、当然のことながらハバキの抵抗を感じるわけです。左手で持っているときより、右手で柄を持ち、左手の親指で鍔を押したときのほうが、刀が重くなるような……。
 「侍は鯉口を切ると、スラリと抜き放った。鞘から滑り出た刀身が、月光を弾いて一閃する。」と書くより、「侍は鯉口を切った。親指が鍔を押す一瞬、感じたそれは、命の重みか。相手の、あるいは己の。スラリと鞘を滑り、抜き放たれた刀身が、月光を弾いて一閃する。」とかなんとか、ひと呼吸分ほどなにか欲しい、そんな感覚。
 間を取るわけでもなく、スローで見せるわけでもない。でも、アニメの政之助の抜刀には、なんとなく、その「ひと呼吸分の重さ」が感じられるような気がするのです。さらに、いつもは猫背をさらに縮めるような、おどおどとした政之助が、ひとたび刀を抜けば、美しいほどの剣舞を見せつける、その色気にも参りました。
 ちなみに、今までのところ、第1話と第6話にしか、刀を抜いた政之助は出てきませんけどね(一応、時代物。一応、浪人が主人公)。


 アニメはフジテレビの「ノイタミナ」枠で第7話まで放送。全12話の予定。弥一の回想として、旗本・三枝家の子息「誠之進」と使用人「弥一」の関係、そして「誠之進」の誘拐が描かれたということは……。盗賊の白楽(ばくろ)とその一味だった「霧中の誠」のこと、裏切り者として追われる弥一のために政之助がついにヤッてしまうところまで放送するのかな? あと5話分でそこまで行くんだろうか……。


 オノ・ナツメの原作もお薦めです。『さらい屋 五葉』(小学館IKKI COMIX)7巻まで発売中。


「TVアニメ『さらい屋 五葉』公式サイト」
http://www.goyou-anime.jp/

さらい屋五葉 第一巻 [DVD]

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さらい屋五葉 第1集 (IKKI COMICS)

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さらい屋五葉 第5集 (IKKI COMIX)

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さらい屋五葉 6 (IKKI COMIX)

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さらい屋五葉 7 (IKKI COMIX)

さらい屋五葉 7 (IKKI COMIX)