Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

映画『アメイジング・グレイス』は歌から始まった大改革の物語



 『アメイジング・グレイス』は英国映画です。「アメイジング・グレイス」という歌が抱える歴史といえば、18世紀末の英国を揺るがした「奴隷制度廃止」の政治運動ですね。元奴隷船の船長で牧師に転向したジョン・ニュートンの作詞によるこの賛美歌は、21歳の議員ウィルバーフォースと英国最年少の首相ピットを動かします。
 元奴隷だったエクィアノの自伝やウィルバーフォースの仲間たちが集めてくる奴隷の実態に関する証言やその証拠、統計などの資料。凄惨な奴隷たちの現実を知った英国国民は、奴隷を使う農園からの砂糖の不買運動を起こしたり、39万人が署名するなど、「奴隷貿易廃止」に賛同します。
 しかし議会の議員たちは、国庫が奴隷の労働で支えられている農園からの収益に支えられていること、英国植民地の農園の勢力衰退を狙うフランスの脅威、特に港町に選挙地盤をもつ議員の奴隷貿易に関わる利権問題などから、世論の動きを「国政への反乱」と位置づけ、ウィルバーフォースの議案を却下し続けます。
 20年の茨の道。1787年にウィルバーフォースが始めた奴隷制度廃止への運動は、1789年のフランス革命を経て、1807年、ついに「奴隷貿易廃止法」可決という形で実を結びます。「奴隷制廃止法」が成立したのは1833年、ウィルバーフォースの死後1カ月のことでした。実に壮絶。


 どこぞの国の現状を彷彿させる物語ですね。必見は、現在もあまり変わらないらしい英国議会の議事進行のようすと、大学からの友人同士のウィルバーフォースとピットの関係。議員に選出されながら牧師になりたいと願うウィルバーフォースを、奴隷制度廃止に目覚めさせたのはピットでした。ピットはウィルバーフォースと共に理想世界を目指し、首相になると彼を右腕とし、しかし首相としての立場から袂を分かち……、自分の余命を悟ってからは影から運動を支援します。このふたりの関係がなんとも萌えます!
 ついでに、ヨアン・グリフィズ扮するウィルバーフォースは愛され上手だ(笑)。


 『アメイジング・グレイス』予告編:http://www.youtube.com/watch?v=YLLbx8QcIDo
 

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