Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

映画の原点を観る! 『メリエスの素晴らしき映画魔術』&カラー復元版『月世界旅行』



 17日19:30〜キネカ大森にて『メリエスの素晴らしき映画魔術』&カラー復元版『月世界旅行』を鑑賞しました。『月世界旅行』は活弁士・山崎バニラさんの語り付き! 見逃しそうなポイントを山崎さんが面白おかしく解説してくださって勉強になりました。「近くて遠い〜やっぱり遠い〜?」と楽しい即興歌も!


 『メリエスの素晴らしき映画魔術』は、2001年に発見されたジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』の“幻のカラー版フィルム”を10年の歳月をかけて復元するまでのドキュメンタリー。メリエスの生涯や作品を紹介しながら、映画黎明期の事情や映像復元技術の驚異的な進歩までわかってしまう映画に興味ある方は必見の作品です。
 これを観ると、『ヒューゴの不思議な発明』がいかに史実に忠実に作られていたかがわかります。メリエスの撮影スタジオや撮影方法の緻密な再現、それを再生の物語に組み込む巧みさ。M・スコセッシ監督の映像マニアっぷりは有名ですが、メリエス愛もすごい!


 映画の歴史は1894年、リュミエール兄弟が発明したスクリーン映写機シネマトグラフに始まります。それに興味を持ったのが、奇術師で劇場経営者でもあったメリエスでした。
 メリエスはある日、映写機の不調でフィルムの回転が飛び、町中を走る馬車の映像が一瞬で葬儀馬車に変わるのを目にします。彼は奇術師の目でこの現象に注目。撮影のタイミング操作で人や物を消失・出現させたり、入れ替えたりするところから、多重露光ストップモーションなど、現在の特殊撮影(特殊効果)の基礎となる技術を次々と思いついては実現していきます。
 これが、メリエスが「SFXの父」と呼ばれる所以です。


 1902年、メリエスはその集大成的映画『月世界旅行』を発表します。30シーン14分に及ぶ、物語のある映画。空前絶後の大作は世界的ヒットとなり、フィルムの1コマ1コマを手作業で彩色した「カラー版」も制作されました。
 しかし、メリエスの映画は発表するや海賊版が横行し、興行的成功が潤沢な資金に結びつかず、やがてワンパターンな作風が飽きられ、時代に取り残されます。負債を抱えて撮影スタジオを売却したメリエスは、300作品にも及んだと言われるオリジナルフィルムをすべて焼却してしまいました。このあたりは『ヒューゴの不思議な発明』にも感動的に描かれています。


 今回、スペインで発見された『月世界旅行』はまさに幻のカラー版。欧米のセピア色に変色した古い絵葉書に、ところどころ淡くピンクやブルー、イエローなどが彩色されているのをご覧になったことがあるでしょう。あれが映像で動いてる感じです。
 100年の歳月でボロボロに劣化したフィルムは、映像復元技術の進化とスペシャリストの登場を待ちながら10年がかりで復元され、メリエス生誕150年に当たる2011年のカンヌ映画祭のオープニングに上映されました。そのフィルムが、11月23日までキネカ大森で観られるというわけです。




 メリエスの『月世界旅行』は、1865年刊行のジュール・ヴェルヌの小説『地球から月へ(月世界旅行)』『月世界へ行く』と、月人のアイデアは1901年刊行のH.G.ウェルズの『月世界最初の人間』をベースにしています。つまり、おそらく世界初の小説の映像化であり、間違いなく世界初のSF映画です。
 ヴェルヌの小説は『海底二万里』(ネモ船長とかノーチラス号とかは小説を知らない人でも知っている名前でしょう)『神秘の島』『十五少年漂流記』(別名『二年間の休暇』)、『八十日間世界一周』など映像化されたものが多いです。最近では『地底旅行』をベースにした『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』が公開されました。でもたぶんヴェルヌの世界観に一番近いのは『月世界旅行』だと思います。


 「『メリエスの素晴らしき映画魔術』&カラー復元版『月世界旅行』」サイト:http://www.espace-sarou.co.jp/moon/
 「『月世界旅行』&『メリエスの素晴らしき映画魔術』」予告編:http://www.youtube.com/watch?v=mXdL0nC6be8 (月世界人はバルタン星人だった!?(笑))