Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

映画『のぼうの城』は滑稽の神髄! 狂言師・野村萬斎の魅力が炸裂!!



 『のぼうの城』鑑賞。「史実を描いたスペクタクル映画がこんなに面白くっていいの!?」って思いました。個人的に5つ星☆です。


 能楽の中の「狂言」は型で滑稽を表現し、観客を笑わせる芸能。伝統芸能であるからには受け継がれてきた「型どおり」であるべきなのですが、これに演者の茶目っ気が加わったら、もっと面白くなるのにと思っていました。
 そうしたら、いらしたんですねえ。所作も発声も型どおり、しかし顔の部品をすべて使っての表情づくりとわずかな声色の上下変化で、型の滑稽に生の滑稽を被せてくる方が。その方こそ、野村萬斎さん。それも計算づくの無理矢理な笑いではなく品を失わない茶目っ気で誘う笑い。「業平餅」など演者によっては下卑た話になりそうなところ、貴公子・在原業平の無知を萬斎さんご自身が愛おしく笑いつつ、茶目っ気たっぷりに演じてみせて、それが観客の笑いを誘うという、客観的というか理知的というか、そんな笑いの構造が心地いいんです。
 『陰陽師』でも源博雅とのやり取りに混じる萬斎さんの茶目っ気が安倍晴明という人物の味わいになっていたと思います。そんな萬斎さんの茶目っ気の威力と狂言師としての「滑稽」の表現力が炸裂しているのが、『のぼうの城』。


 萬斎さん演じる成田長親は臣下のみならず農民からも「でくのぼう」、略して「のぼう」様と呼ばれる不器用なお人好し。成り行きで忍城(おしじょう)の城守となった彼は、天下統一を目前にした豊臣秀吉の側近・石田三成の軍勢と対峙することに。
 三成軍2万余に対して、長親の兵は5百騎。勝敗は決したかに見えたが……。一騎当千の長親軍の武将たちの戦い、若侍・酒巻靭負の知略が冴えた火攻め、そして昨年9月の劇場公開が延期される原因となった水攻めのシーンなど、迫力たっぷり。


 なにより物語が過不足なく紡がれるのがよかったです。長親がどんなに臣下や領民に愛されているか、彼が言うことなら苦笑しつつも「仕方がないな」と協力し、彼が害されれば、怒りをもって一致団結して敵に立ち向かう。一方、三成側は圧倒的な軍勢を誇っていても、三成自身が全軍を掌握しているわけではなく、きっかけさえあれば瓦解する危険を内包している。それらの事情がきちんと描かれるので、結果も納得できるし、後味もいいんです。
 さらに、この戦いを経て長親も三成も一回り器が大きくなったことが、説明的なセリフなどではなく、二人が醸し出す空気で感じられて「おお」と思いました。


 長親の幼馴染で勇将・正木丹波守役の佐藤浩市、彼にライバル心を燃やす柴崎和泉守役の山口智充、酒巻靭負役の成宮寛貴石田三成役の上地雄輔豊臣秀吉役の市村正親など配役も意外性があり、現代的なセリフ回しと共に、歴史物というよりスペクタクルなエンタテインメント作品として楽しめました。
「のぼう様・オン・ステージ」はじめ萬斎さんの演技は問答無用で必見です!


 『のぼうの城』サイト:http://nobou-movie.jp/
 『のぼうの城』本予告編:http://www.youtube.com/watch?v=vCCzFakSD08
 

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