Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

幻の連載!? 第3回「少女マンガ」メモリアルコレクション<2>

 「幻の連載」の第3回目です。予定では、ときどき関連のニュースを交えながら、各マンガ家の代表作を2作ずつ紹介していくつもりでした。
 ということで、池田理代子からもう1作。やはり私はアニメ畑の人間なので、この作品になりました。



「少女マンガ」メモリアルコレクション<2>『おにいさまへ…
掲載日:2007年2月14日 テーマ:読書、マンガ


疾風怒濤の愛憎ドラマのエッセンスが詰まった中編の傑作

池田理代子の代表作といえば、『ベルサイユのばら』をはじめ、第一次世界大戦ロシア革命をモチーフにした『オルフェウスの窓』、ナポレオンの栄光と失墜の半生を描いた『栄光のナポレオン -エロイカ』、「大帝(ヴェリーカヤ)」と称されたロシアの啓蒙君主エカテリーナ2世の伝記のマンガ化『女帝エカテリーナ』など、外国ものの長編作品が挙げられるでしょう。長編は史実と絡めながらのダイナミックなストーリー展開が魅力的ですが、その根底に流れる独特の愛憎劇のエッセンスを直に味わいたいと思われるなら、お薦めなのが中・短編です。
今回ご紹介します『おにいさまへ…』は、「週刊マーガレット」(集英社)で1974年に連載された中編マンガ。名門女子校に入学した普通の女子高生の目を通して、優雅に着飾った上流階級の少女たちの、家柄や血筋へのこだわり、優越感がもたらす残酷、保身のための欺瞞などが暴かれていきます。


マンガ『おにいさまへ…』から、昼メロ真っ青のアニメへ

陰のあるかっこいい上級生(もちろん女性)に倒錯した愛を感じ、思い悩む主人公。計算高く上級生に取り入るわりに、主人公へなみなみならぬ執着と男性不信を露にする同級生。上流階級のプライドゆえに、父親に愛人がいた事実が許せず、妾腹の妹に残酷な仕打ちを繰り返す姉。無気力に死の影を漂わせる上級生と、自身の命の限りを知るがゆえに最愛の人さえ突き放してしまう、その友人……。そこに、名門女子校の中でもさらに才色兼備を誇る生徒だけが選ばれる「ソロリティ」の制度が加わって、学校生活はますます複雑なものに。
物語は、主人公が「おにいさま」と呼ぶ大学院生にあてた手紙の内容として進行します。手紙を読む彼の「たった半年ばかりのあいだに、きみをそんなにもおとなにしたものはいったいなんなのだろう」という慨嘆に、思わず共感してしまう怒濤の展開。そこには人間の価値を一部の人間が決めることの無意味さ、“上流”という意識の愚かさがメッセージとして込められています。
おにいさまへ…』は1991年、出崎統の監督、杉野昭夫作画監督でアニメ化されました。この二人は『エースをねらえ!』や『あしたのジョー』、近作ではNHK放映の『雪の女王』などを担当した名コンビ。出崎氏は『ベルサイユのばら』『はじめ人間ギャートルズ』の監督としても知られ、特に原作を大胆に解釈した構成と演出に定評があります。
おにいさまへ…』はNHK BS-2で約1年間放送されましたが、監督は原作のドラマティックな愛憎劇をさらに誇張。昼メロも及ばない、絡まり合った血縁関係を含む複雑な人間模様や、キャラクターごとの秘められた過去、極端な感情描写によって、視聴者に衝撃を与えました。


ソロリティ」ってホントにあるの?

作品内で大きな意味をもつ「ソロリティ sorority」は、アメリカの大学などにある女子学生の社交クラブのこと。成績や容姿の優れた学生が、クラブのメンバーの審査を経て入会を許され、特別な寮で共同生活をします。メンバーになれば、OGの力で就職にも有利。男子学生にも同じようなグループがあって、こちらは「フラターニティ fraternity」と呼ばれます。歴史上、社会的な身分制度のなかったアメリカがつくりだした、“上流階級”登竜門といったところでしょうか。

 「社会的な身分制度」というところ、「ヨーロッパの貴族と庶民のような階級制度」、あるいは「日本の士農工商のような身分制度」にしたほうがよかったかも。


おにいさまへ… 1 (中公文庫 コミック版 い 1-43)

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おにいさまへ… (2) (中公文庫―コミック版)

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おにいさまへ…DVD-BOX1

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