Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

『僕たちがやりました』第7話 「新しいトビオ」との出会いが終わりの始まり



 屋上から飛び降りて、死んだら贖罪、助かったら「新しい俺」を始める。

 ーー助かったトビオは「新しい俺」を始めることにします。



 人間、自分の心で受け止めきれないことがあると、「錯乱」します。そういうとき、本人はいつもどおり自分で考えて行動しているつもりでも、理性で隠していた本心や押さえていた本性が、気づかないうちに表に出てきます。まるで、体や心が本性や本心に乗っ取られたように、いつもの自分では考えられない言動をするんです。



 それを踏まえて考えると、屋上からの飛び降りも含めてトビオの行動はとても自然です。

 彼にとって受け止めきれないこととは、「10人もの高校生を殺したこと」「保身のために無実のホームレスを死刑に追いやろうとしていること」。そして、それを闇の中に葬ったことで「一生続く罪悪感」。

 屋上から飛び降りたトビオが一瞬のためらいもなく、笑みさえ浮かべていたことに、彼の「逃げたい」という本性が表れている気がしました。さらに、落ちながら「死んだら贖罪、助かったら『新しい俺』を始める」と考えているあたり、トビオはとことん自分本位なんだな、と。犠牲者10人の写真を直視しても、彼らの命を奪ったという罪悪感よりも、その罪悪感を覚える自分から逃げたいだけなんだなと感じました。



 命をとりとめたトビオは「あんなにつらい思いしたんだ」「そこそこじゃ足りねえよ。幸せになってとんとんだろう」と、性格が変わったように明るく振る舞いだします。

 自分で死を選んで、死んでいたはずが命拾いしたとなると、たぶん人は伊佐美のようになります。性欲マシーン・伊佐美は「リトル伊佐美」に導かれるままに今宵に襲いかかっていましたが、誰もがあんなふうに狂躁状態に陥るのではないでしょうか。

 物怖じすることなく年上の女性にナンパを仕掛け、あんなに怯えていた市橋にも堂々とタメ口を叩く。そのうえ、あろうことか、蓮子とトビオの関係を知っていて一歩が踏み出せずにいる市橋に、蓮子との恋を焚きつける。本来のトビオなら絶対にやらないことばかりで、無理に「新しい俺」になろうと狂乱しているようにしか思えません。

 南先生とラブラブになり、市橋と友だちになり、彼と蓮子の恋を応援する。本当にそれが「新しい俺」だと信じて生きるつもりだったのなら、蓮子と関係をもつことはなかったはずなんです。

 蓮子と恋人になった時点で、南先生の恋人で、市橋の恋を応援する友だちの「新しい俺」は霧散します。残ったのは、蓮子が好きな本来の自分に戻って「幸せ」を噛みしめるトビオと、裏切られた南先生と市橋でした。



 市橋……爆破事件で夢を壊され、取り巻きに蔑まれ、裏切られ、ただひとりの家族である祖母は病重く、狂躁状態で怖いもの知らずになっているトビオを「いいヤツ」と思ってしまったがために復讐相手を失い、蓮子との恋を応援してくれたトビオに彼女をさらわれ……。あれ、ここまでの話数でいちばん追いつめられたのって、市橋では!?



 爆破事件の犠牲者は高校生10名と命を金で買われたホームレス1名。伊佐美が犠牲者の家を訪問するのは(リトル伊佐美復活のためとはいえ)、彼らが生活していた空間、彼らの死を悲しむ遺族を見ることで、写真だけの存在だった彼らを、自分と同じ血肉と思考をもった「人」と認識する行為なんですね。
 嘘をついて家に上がり、仏壇に手を合わせ、遺族が喜びそうな言葉を言って感謝されることで「チンコン」するサマには、「やっぱりマルと友だちでいられるだけのことはあるわ」と呆れますけど。



 さて、実は伊佐美の行動はいつもトビオの一歩先を行っています。

 第2話で、テレビで死んだヤツらの写真を見たら、吐き気がして寒気が止まらなくなって、こんな気持ちでいるなら死んだほうがマシだと首吊り自殺を図る。第3話で、自殺から生還したら、自分の心のままにトビオの目の前で今宵を襲うような狂躁状態に陥る。そして、第6話で金を盗んだマルを殴るところまで、トビオに先行。

 伊佐美が吐きながらチンコンすることで犠牲者を「人」と認識していったように、トビオがそれを認識するきっかけが市橋なのだとしたら……。





 第7話は市橋=新田真剣佑のかわいらしさが全開で、黒ヒョウはネコ科だったと気づいたときのような気持ちになりました。制作発表会や雑誌の対談から窺える、窪田さんとの仲の良さが、ふたりの映像すべてから放射されてましたね(笑)。



 そして、蓮子とトビオのシーン。今宵とのときはあまりドキドキしなかったのですが、今回はふたりの肌の色の違いやトビオの「大きなスプーン」っぷりにドキドキしました。
 相変わらず照明&撮影がいい仕事しています。誰でも、映す向きによっても顔の印象って変わるものです。『僕やり』の撮影スタッフは、この俳優のこの感情ならこの向きというのを心得ていて、ハッとするいい表情ばかりを映像に焼きつけていらっしゃること、すごいなと感心しています。