Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

『僕たちがやりました』第8・9話 みんな表情が秀逸すぎてリピが止まりません



 第8話を観たとき、市橋はトビオが矢波高校爆破事件の犯人だと思いながら死んだのか、トビオは潔白だったと思いながら死んだのか、どちらだろうという疑問が浮かびました。



 個人的には、市橋はトビオが犯人だと疑ったままだったのでは、と考えています。爆破事件があってから「トビオたちが犯人」と確信して追ってましたしね。トビオが学校の屋上から「落ちて」入院したことも知っていたでしょうし、トビオからの動画の「(犯人は)今頃、自分がやったこと、絶対後悔してるからさ」はその表情も相まって、決定打だったんじゃないか、と。

 でも、市橋は「自信のないヤツは嫌い」という自分の主義で、自分の目にそう映る学生や先生を叩きのめしてきた過去があります。今の自分の状態をしっぺ返しだと言う市橋は、蓮子を助けるために自ら刺されたとき、もう死んだつもりだったんでしょう。

 取り巻きに「ゴミのように」扱われ、あれほど嫌いだった「自信のないヤツ」に自分がなってしまったとき、トビオが同情も憐憫もなく付き合ってくれた。蓮子はもともとトビオが好きだったし、自分もトビオに「胸張って生きている」男気を感じたから、「ふたりが幸せならいい」と思ってしまったのかな。
 彼がやってきたことは、おそらく肉体的精神的に何人もの人生を狂わせたと思います。実際、マルにしたことも、犠牲者同士に殺し合いをさせ、勝っても半殺しにして裸で段ボール箱に詰めるというひどいものでした。

 だから同情の余地はないのですが、それでもしっぺ返しがきつすぎましたね。

 市橋を哀れと思う一番の理由は、彼が「胸張って生きてる」と感じたトビオは本来の彼ではなく、狂躁状態の「新しい俺」だったことです。そのトビオが自首を決意し、実行するきっかけになるのが、市橋の死なのですから、皮肉なものです。





 トビオは「自分のこと」については非常に敏感(蓮子と市橋がふたりでいただけで、付き合ってると誤解して全力疾走できるほど)ですが、「他人のこと」には非常に鈍感です。特にこのときは市橋に蓮子とつき合っていることが言えて、祝われて、本当にホッとして気が緩んでもいました。だから、市橋からの動画を見て、様子がおかしいと思いだしたのは「終わりにするわ」あたり。市橋が次に何を言い出すのかと動画に見入っていたら……。

 たぶんトビオには想像できなかったんだと思います。自分は飛び降り自殺しても、他人が同じことができるとは思わない、それがトビオです。



 私だけかもしれませんが、動画ってその人が今、そこでしゃべってるみたいに錯覚しませんか。トビオが動画を見ている間に、市橋は松葉杖を突きながら屋上まで上って、屋上を歩いて、飛び降りた。
 スマホに映る市橋、それを見るトビオ、その後ろに落ちてくる市橋の身体。スマホ全盛の現代ならではの構図だと思います。



 トビオにとっては、矢波高校爆破事件は自分は爆弾の設置を手伝っただけという意識がどこかにあって、自分のせいという意識は薄かったかもしれませんが、市橋の死は間違いなく自分のせいと思えたでしょう。

 市橋に障害を負わせて絶望させたのは、爆破事件の犯人である自分。それなのに、自分が犯人であることを黙っていたために、市橋はトビオを友だちと思い、好きな人を奪った彼の幸せを祈りながら死んでいった。

 人生でこれ以上最低最悪な事態ってなかなかないと思います。それはもう抜け殻みたいに街をふらついてしまうでしょう。ところで、蓮子の家の前でうずくまって彼女に「俺が殺しちゃった」と告げてから、トビオは街を彷徨ったんですかね。あんな状態のトビオを、蓮子がひとりにしてふらつかせるかな、とちょっと違和感。





 トビオが自首を決めた頃、他の3人もそれぞれに犯罪を闇に葬ることでもたらされる不幸を味わっていました。

 伊佐美は、彼が犯罪を犯したと気づいている今宵に、お腹の子どもを「犯罪者の子」にしたくないからと別れを言い渡されます。反対する父親を「私はお父さんと違って、ちゃんと子ども、大切にするもん」といなし、追いすがる伊佐美を「私に隠してることあるじゃん」と拒絶する今宵ちゃん、やっぱり地頭がいい! 『僕やり』のなかで彼女が一番好きかも。

 「気づいたら、好きすぎてやべえよ」という伊佐美も好感度爆上げです。このふたりのストーリー、わりと好きかも。



 マルはウンコくんに「お前みたいなクズと誰が友だちになるか」とからかわれ、「友だちがいない時点で人生の負け」と言われ、慌ててパイセン、伊佐美、トビオに電話しますが、誰ともつながりません。言葉をかけてほしいときに、誰もいない。それで友だちの大切さに気づくというのも……短絡的なマルらしいというかなんというか。

 「これまで裏切り続けてマジごめん」と謝られて、他の3人がゲームにかこつけて「変な数字来い」「警察にバレろ」「逮捕されろ」とグチグチ言ってるのがいいなと思いました。なんだかんだ、3人ともお人好しですね。それで、ゲームとはいえ、メキシコ取引で2億円にしてほくそ笑んじゃうのがマルですね(笑)。

 でも、サイトや動画を作る腕があるのは見直しました!



 金持ちで何でも持ってるけど、実は何も持ってないパイセンの出自がわかって、親の愛さえ持っていなかったことが判明。言いたい放題の父親とやりたい放題の異母弟に卑屈な態度を見せますが、目には悔しさや「このままではすませない」という決意が窺えるのはさすが今野さん。やはりパイセンが輪島攻略へのキーマンになりそうです。

 願わくば、後味の悪いことになりませんように。





 第8話はトビオと市橋の、第9話はトビオと蓮子のデートシーンが、それぞれかわいくてよかったですね。

 市橋とのボーリングシーン。踊るトビオというか窪田さんが素っぽくて(笑)。ヒップラインやボールを投げるときの腕や背中のラインが美しい! 市橋というより70%ほど真剣佑さんは、松葉杖を突きながらなのに全身から力強さが感じられて、飄々とした窪田さんといい対称になっていました。



 蓮子とのデートシーンは、トビオのちょっとした表情、蓮子の頭に手を置く仕草、背を向ける姿のひとつひとつに「別れ」を予感させる寂しさが漂っていて、「さすが」と唸らされました。

 「なぜ屋上から落ちたのか?」「なぜ市橋を殺したなんて言ったのか?」。トビオに聞きたくても聞けない蓮子こと永野さんが、窪田さんの芝居を受けて、去る背中を追いかけたり、抱きついたり、「幸せだけど……」の「……」の部分をよく表現されていて、余韻が微笑ましいのに切ないという。そして、予感していたからこその、トビオの「別れよう」に対する「そっか」。矢波高校の爆発シーンや市橋の姿のインサートが、このふたりは一緒になることはないんだとダメ押ししてくれます。

 想い合っているのに別れないといけない。窪田さんの表情も永野さんの表情も心情がそのまま溢れ出るような秀逸さ。側にいて、今にもそういう別れをしようとしている男女を見ているようなリアルさを感じました。



 と言いつつ、第8・9話では、「あいつ(市橋)のこと何も知らなかった」と自室のベッドの上で考え込むトビオの表情が一番、胸をえぐられるものがありました。

 ……などなど、この2話はトビオも、他のキャラクターも本当にいい表情が多いので、繰り返し視聴、オススメです。