Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

『ヒーローマニア 生活』は“友情”が育まれる過程にアテンション!



 『ヒーローマニア 生活』は、劇場公開前からチェックしていたのに、ちょうど忙しい時期で見逃した映画。パッケージ化を待つこと、約半年。評価が「良い」「悪い」に極端に二分化していたので、「ただただ冗漫な映画になってるんだったらちょっとなあ」とレンタル(DVDしかなかった)して観てみたら、やっぱり面白いじゃないですか! 買っちゃいましたよ、『マニアック・エディション』を! それもブルーレイを!(笑)

 当たり前ですが、DVDとは画質が段違いで、特にこの映画で重要な役者さんたちの表情の演技はブルーレイでないと楽しめないと断言します。



 “吊るし魔”の東出昌大窪田正孝小松菜奈片岡鶴太郎の演技はケレン味とリアルが見事に融合していて、それが映像として観られるだけでもう満足。

 特に一度決裂した中津(東出さん)と土志田(窪田さん)が、中津の危機を土志田が救うカタチで顔を合わせ、ふたりで一食分のラーメンをすするシーン。中津の謝罪に箸を置いた土志田がちろっと舌を見せるんです。ごく自然なのに意味不明で、構図もカメラアングルもトーンも最高なこの場面に、より惹きつけられる引っかかりを与えています。さすが演技巧者の窪田さん!

 メイン4人の役者さんは選択肢がたくさんあるなかでこの演技を選んでいるという余裕があり、その余裕がキャラクターのリアルな存在感を構築していると感じました。



 対して船越英一郎演じる宇野は、こうするしかなかったのかなという消去法の演技。ホームレス姿で登場したときは船越さんとわからなかったくらいで「新境地か!?」と注目したのですが、結局はいつもの船越さんでした。では、他に演じようがあったのかと言われると、思いつかないんですけどね。

 吊るし魔が会社組織になってからは、どのシーンも必要不可欠と納得しながらも中だるみを感じて、「もうちょっとなんとか……」という歯がゆさが……。



 そんなふうにそこここ惜しいところがあるのですが、何度も見返してしまいます。それは中津と土志田の友情成長物語としてよくできているから。

 力も度胸もないヘタレフリーターの中津は、暴力三昧・迷惑三昧・理不尽三昧の町の若者たちに対抗するため、謎の身体能力と度胸をもつ下着泥棒でニートの土志田を自分の武器として利用しようとします。

 一方、コミュ障でバイト面接を落ち続け、一生ニートなのではと内心怯える土志田は、自分の能力を初めて認めてくれた中津に、「僕は中津さんに救われました」と断言するほど心酔します。警備会社になってから宇野のもとで勤勉に働いたのも、中津が会社化を認めたからであり、会社に尽くすことはイコール中津に尽くすことと思っていたから。宇野に「立役者」と認められたうれしさも、中津あってこそ。

 土志田がそこまで中津に心酔したきっかけは、日下(鶴太郎さん)の金ヅチに打たれたとき、非力な中津が日下の気を引いて身代わりになってくれたことでしょう。土志田が渡した護身用のヨーヨーを金ヅチに打たれた衝撃にも手放すことなく握り込んだ中津に、土志田が“落ちた”瞬間が表情によく表れていました。ところが、宇野により中津が自分を“道具”としてしか見ていなかったと聞かされ、中津本人にも肯定され、土志田はくずおれてしまいます。

 ……というところから、戦闘はスタイリッシュに決めたい土志田が、スタイルを捨ててがむしゃらに中津を救おうとし、中津もまた土志田のために自ら敵に向かっていくに至る過程が、丁寧に、特にセリフより表情に表れているのがいいのですよ!



 細やかな表情をアップで見せる手法は少女マンガっぽいというか、画面のアップや引きのタイミングがマンガに近いというか、コンテはマンガっぽいのではと思えるクセのある映像が作品にマッチ。コメディで終わらず、社会への危機感やヒーローや組織に対する哲学など、考えさせられる深みもあり。実は宣伝文句の「和製『キック・アス』」や「Let's Party!!!」とはかけはなれた、良くも悪くも邦画が捨てきれない“真面目”が詰まった映画。私と好みが似てる人はきっとハマります!(笑)






ヒーローマニア -生活-

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