Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

映像関係者必見! 完成しなかった映画の証言映画『ホドロフスキーのDUNE』



 渋谷のアップリンクに『ホドロフスキーのDUNE』の試写会に行ってきました。
 デヴィッド・リンチ監督、カイル・マクラクラン主演の映画『デューン/砂の惑星』は、ご存知の方、多いですよね。それより以前にアレハンドロ・ホドロフスキー監督が制作を進めていた映画『DUNE』のメイキングドキュメンタリー映画です。


 この映画のなにがすごいって、フランスの漫画家メビウスジャン・ジロー)が描いた映画の絵コンテが見られること!
 メビウスの漫画を見たホドロフスキーは「これぞ『DUNE』のカメラだ!」と彼を探し出し、画面の要素、構図、アップや引き、パンなどのカメラの動きまでお任せで映画1本分の絵コンテを描かせます。その画撮(コンテ撮)動画があって、見れば、映画がどんな映像になるはずだったか、どんなに画期的になものになるはずだったか、わかるんです。
 アニメの絵コンテを見慣れている目に、メビウスの絵コンテは、そのまま実写映像に置き換えれば、映画は完成するだろうと思えるくらい具体的でした。


 ホドロフスキーはさらに、特殊効果にダン・オバノン、メカ美術にクリス・フォス、美術デザインにH・R・ギーガー、音楽にピンク・フロイドとマグマを引き込んでいきます。
 各分野で非凡な才能を持つ彼らは、ホドロフスキーにとって「前代未聞の傑作映画」のために団結して戦う「ウォリアー(戦士)」でした。
 キャストも同じく、サルバドール・ダリオーソン・ウェルズミック・ジャガーなどなど、このキャラクターにはこの人物と決めたら、一歩も引かない。
 でも、特にスタッフについては、会ってみて失礼な態度をとられたら、「仕事に魂が感じられない。そんな人には傑作など生み出せない」と座を蹴って帰ってしまうことも。吸引力と我の重量感と影響力の大きさはブラックホール並み。


 しかし、『DUNE』は制作会社が付かずに頓挫します。そりゃ、資金を出し、配給にかける立場として「1時間半の映画にしてくれ」と要望出したら、ホドロフスキーに「12時間でも足りない」と返されてはね……。


 絵コンテや人物設定画・美術設定画を含む『DUNE』の百科事典ほどの厚さのある企画書は、デヴィッド・リンチに渡され、『デューン/砂の惑星』になりました。でもそれは、ホドロフスキーが創ろうとしていたモノとは全然違う、「普通の作品」に堕していたのです。


 『DUNE』の企画が持ち込まれたいくつかの映画会社には企画書が残り、その要素が『スター・ウォーズ』をはじめとするSF映画に受け継がれていきました。また、オバノンとギーガーは『エイリアン』を誕生させます。
 『DUNE』が生み出したさまざまなアイデアSF映画を一気に進化させたのでした、というドキュメンタリー。


 『ホドロフスキーのDUNE』は、映像制作に携わっている方はもちろん、編集やライターなど、映像作品に関わる方も観たほうがいいとお薦めします。
 メビウスの絵コンテはすごいし、才能ある人を巻き込んでいくホドロフスキーの惹力もすごい。それ以上に、多くの人が能力と時間のかぎりを尽くしたものは、頓挫しても、続くものに影響を与えるのだということ。そして、メビウスが絵コンテから『L'Incal(アンカル)』という漫画シリーズを描き上げたように、新たに生まれるものがあるのだということ。きっといつか『DUNE』は映像化されるという期待も含めて、前向きになれる映画です。


 『ホドロフスキーのDUNE』サイト:http://www.uplink.co.jp/dune/
 『ホドロフスキーのDUNE』予告編:http://www.youtube.com/watch?v=q75RaebfRXw