Diary For Paranoid @ hatena

思いつくまま書くブログ。最近は窪田正孝出演作品感想に特化してます(笑)。

アニメ映画『楽園追放-Expelled from Paradise-』の電脳空間の描写に感動!



 フルCGアニメ映画『楽園追放-Expelled from Paradise-』は非常に饒舌な作品。たとえば「長年、肥料を売っている」というセリフで「ああ、火薬を作ってるんだな」と思ったら、画面で硝酸塩類の説明が始まる、みたいな。
 映像を観ていて「ん?」と引っかかると、すかさずセリフで説明してくれる、そのタイミングの妙はまさに「痒いところに手が届く」感覚。
 おかげで、旧人類(地球で生活している人たち)と新人類(肉体を捨て、電脳世界で生きる人たち)、そして人類に開発されたA.I.が更新を重ねて進化した存在による、「人間とは何をもって定義されるのか」というテーマとか、サイバースペースとリアルスペースとアウタースペースという3つの世界の概念と相互の関わりとか、扱っているテーマが大きくて複雑なわりに、謎が残ることなく、割り切れない思いもなく、スッキリと映画館を出ることができました。


 荒廃した地球が西部劇を思わされるものだったせいもあり、深宇宙探査船が発進したときには、『スタートレック』の"Space, the final frontier."のナレーションが脳内に流れたのも(笑)、明るい余韻がある映画だったから。


 印象に残ったのは、電脳世界では存在価値を示さなければ、個体に与えられるメモリが限られるということ。標準メモリでは活動や感覚が制限されるため、“自由な存在”になるためには自分の価値を上げなければならない。
 電脳世界=格差社会をテーマに据えた作品は、私が知るかぎりアニメでは『楽園追放』が初のような気がします。


 あと、フロンティアセッター(CV: 神谷浩史)がかわいかった! 彼のマスコットストラップとかが存在しないことにびっくり。えー、あんなにかわいいのに……。もし発売されたら、絶対購入します!
 フロンティアセッターのストラップはともかく、アンジェラのグラフィグがないのは解せぬ。映画の中で圧縮されたアンジェラが箱形ドットみたいな姿になってるのがこれまたかわいかったのですが!
 ちなみにムック本並みと評判のパンフレットは、私が鑑賞したときは完売してました。


 この作品、内田美奈子の『BOOM TOWN』や大清水さちの『ツインシグナル』の電脳組が好きな方は真芯を射抜かれると思います。マンガではすでに描かれていた電脳空間がようやくアニメーションで現出したという、「ああ、これだ!」という感動があります。
 画的な部分だけを言えば、動きがつく分、アニメはマンガの進化形という認識でいましたが、マンガのほうがずっと進んでいた表現分野があったんだな、と。フルCGという技術を得て、ようやくアニメは電脳世界を電脳世界らしく描けるようになったんだな、と。
 『楽園追放』のようなフルCGアニメで、『BOOM TOWN』の朱留やオズたち“事件(バグ)専門処理チーム”デバッガーの活躍や、『ツインシグナル』の“世界の叡智が集められた電脳図書館”オラクルを巡る守護ロボットA-Oオラトリオとハッカーたちとの攻防を観てみたいなと心から思いました。
 特に『楽園追放』の電脳空間ディーヴァの保安局上層部の一人がガーネシャの姿をしているのが、『ツインシグナル』小説版3巻でオラトリオが追ったインドのハッカー、暗黒母神(カーリー)を思い出させるんですよ。電脳地図の認識は1990年代からあまり変わってないのだなあ、とか。
 ……とかとか、『イノセンス』とは別の意味でいろいろ思考が尽きない作品です。


 『楽園追放-Expelled from Paradise-』は東映アニメーションニトロプラスの合作によるオリジナル・アニメーション。
 2014年12月現在、東京エリアでは渋谷TOEI、新宿バルト9、池袋HUMAXシネマズ、横浜ブルク13で公開中です。


『楽園追放-Expelled from Paradise-』サイト:http://rakuen-tsuiho.com/
『楽園追放-Expelled from Paradise-』劇場予告編:https://www.youtube.com/watch?v=caHnAZTGvC8